Sanctum - Let's Eat

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フランス産のホラー映画のようなジャケットがなかなか素敵。

おお、ボーカルが入った瞬間、キリングジョークかと思った。例の野太いダミ声にそっくりだ。

いくつかの曲の方程式は、実験的なサンプル音とシンセがループされ、そこへ弦楽器やピアノが哀しげな音をかぶせてくる感じ。金属音とリズムが強調され、ザクザクのギターやビヨンビヨンのシンセベースもあまりないのでメタルとデジタル色は薄い。

ここまでcoil直系の真面目なインダストリアルバンドは珍しいのではなかろうか。

四曲目では女性ボーカルが登場、叫びと呻き声の男のボーカルと違ってちゃんとメロディを歌っている。

悪趣味なサウンドなのに意外と聴き疲れしないのがミソ。

とても良い。

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kid606 - GQ on the EQ++ ノイズとグリッチにオリエンタル

八十年代のジャパニメーション風の女の子をジャケットにあしらったアルバム。キャラクターに元ネタがあるのかも、イラストレーターの名前も不明。

アニメの女の子を表紙にするのは、秋葉系かゲーマー出身のアーティストであれば珍しくないだろう。しかし、kid606ベネズエラ出身のガイジンである。

ガイジンがこのような選択をする場合、本気のotakuである可能性が非常に高い。AKIRA甲殻機動隊が海外で受けている背景には、サイバネティックスとオリエンタルな世界の融合があり、きっと彼らには日本人が感じるよりもずっとセンシブルに響いているのだろう。

そういえば、ニューロマンサーもチバ・シティから物語ははじまっていたな。ブレードランナーは香港だっけ、知らないや。


アルバムは、一曲目からグリッチかつノイジーな電子音が走り、変容しながら飛び散っていく。一般の音楽趣味の人にとってはhard to listenな音だろう。

それでも、過激なことをやっていても人気があるアーティストの常として、ある程度の甘さや取っ掛かりの良さがアルバムには用意されている。深海を漂う心地よき旋律があれば、曲によっては東洋音階のつたないメロディまで出てくるといったふうに……

聴いていてふと思った。

二〇一六年現在にこのアルバムを聴く必要はあるだろうか、と。

 

もっとエクスペリメンタルで快感指数の高い曲をついつい思い起こしてしまうのだ。キッド606は自分にとって特別なアーティストでも好きなアーティストでもないので余計にそう感じてしまうのだな。

 

この曲だけは時々聴きたくなる

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シグルイ - 原作:南條範夫・作画山口貴由 武士道を描いた漫画の最高峰のひとつ

 濃い。とにかく濃い。表紙だけでも十分濃い。鯉と盃をバリバリ食べる岩本虎眼先生ひとりだけでも超濃厚だ。

 南條範夫の小説、駿河城御前試合の第一試合である藤木源之助と伊良子清玄の対決を下敷に、作画の山口貴由が独自の見解とストーリーをふんだんに追加注入した内臓まる見えの復讐譚。

 駿河城御前試合を漫画化した作品は他にあれど、シグルイの後に読んでしまうとどれも糖尿病患者の病院食のような薄味に感じてしまう。それは、山口貴由の描きこまれた濃密な画力以外にも、美しい構図と間の取り方、頻繁に挿入される雅趣なナレーションによるところが大きい。岩本虎眼先生のラストバトルの描写は、スプラッター映画以上の狂気と血糊が炸裂しているというのに、同時に風流と文学色までもが顕在するという離れ業。こういう作品が作れる人の頭のなかは一体どうなっているのだろう?

 

なお、アニメ化もされている。

期待していなかったので今の今まで未見でいたが、これは面白そうだ。

なぜかBGMがTOOL。

 

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のりりん - 鬼頭莫宏 読めば乗りたくなること必至、ラストの含みが妙妙たる自転車入門漫画

ロリコンかつ鬼畜な作風が一定の支持を得ていた作者。連載雑誌の兼ね合いか気まぐれかは知らないが、今回は爽やかなスポーツものを描いている。

エヴァンゲリオン以降(さすがにセカイ系って言葉はもうきかなくなったな)に増えた世界崩壊系やシチュエーションスリラーよろしくのデスゲーム、トラウマとルサンチマンを売りしたドロドロの愛憎劇はここ二十年ばかしずっと人気のあるトピックだし、作者の本領もそこにあると思っていたのに、あまりにも真っ当過ぎてこういう世俗的なものも描けるのか、と驚いてしまった。

登場人物もヒロインの女の子以外は普通だ。そのヒロインですら天然でやや元気なところと、パンクしたタイヤを直してくれた高校生に十年ばかり恋をしている以外は突っ込みどころは少ない。

超常的な力を発揮するキャラはいないし、巨大ロボもでてこない。漫画特有の過剰なデフォルメすら見受けらず、はっきり言うと地味な作品である。しかし、まさにそこがこの漫画にリアリティを与え、乗ってみようかな、という気を起こさせる仕掛けとなっている。

図解 思考は現実化する―金持ちビジネスマンになるための17の方程式(ゴールデンルール) 有名すぎて手を出しかねていた本の簡易図解版

要点を十七の方程式として書き出しており、ページ数も少なめなので気楽に読める一冊。読んで思ったことは、ライフハックや様々な自己啓発本の類はこの本が元ネタになっているのではないか、ということ。目的の明確化、集中力の重要性、行動の習慣化は頻繁に取上げられるテーマだし、PMAやヴィジュアライズもどこかで読んだことがあった。いま積読している本が減ったら本家のどれかを手にとってみたい。

ツイン・ルームから海が見える 喜多嶋隆 どの短編も魅力的な女性が現れては主人公に淡い印象を与えて消えていく

ハワイにあるホテルのライフガード兼保安係である日系人が主人公。どの短編も魅力的な女性が現れては主人公に淡い印象を与えて消えていく。主人公の感情が語られることはあまりなく、カメラのような視点の進行係として機能している。作品で驚かされたのはあまりにも簡潔すぎる作者の文体だ。短文とドライな雰囲気は片山義男を髣髴させたりもするが、こちらの文章はさらにシンプル。それでいて、携帯小説にありがちな未熟さだとか、幼稚さだとかを微塵にも感じさせないのは単純に凄い。こんな書き方もあるのかと、素直に感心してしまった。

GOTH 夜の章 フィクションとはいえ、夜とは凄い名前ですな

ビートルジュースに出演していた頃のウィノナ・ライダーに似ているというヒロイン。フィクションとはいえ、夜とは凄い名前ですな。日本ではゴシックやゴスというとコスプレ文化でしかないけれど、本場の人たちはジョックに殴られながらも、ドラキュラ研究や墓場を探索するなどなかなか気合が入っている。

さて、この本はゴスというタイトルながら、ヒロインの造形以外はほとんどゴスというものではない。狙っているのだろうけど、トリックがどれも入れ替わりであるのはちょっとだるい。