2016-11-05から1日間の記事一覧

<不良>のための文章術  永江朗

タイトルの不良とはプロのライターを指している。扇情的な表題のわりには保守的な内容ではあったが、ブログやSNS上に書く日記にも使えるテクニックが書かれていたので一読した価値はあった。とりわけ、文章の削りかたと漢字の開きかたは添削の例が複数だ…

フーコー入門 中山元

また同じ轍を踏んでしまった。もちろん確信的にだ。どの哲学書でもそうだが、読んでいる時は作者の思想や論理をある程度理解している気になってはいる。しかし、本を閉じ、さあ何が書かれていたか思いだしてみようじゃないかと頑張った瞬間、まるで急性の健…

美しき拷問の本 桐生操

この手の処刑や拷問を扱った悪趣味な本は、ネットが一般化する前だともっと価値があった。読みすすめるほどに単調な一口話としてしか感じられなくなってしまうのは、ネット上にもっと過激な動画が殺人や暴力動画がいくらでも転がっている現実があるからだろ…

美しき殺人法100 桐生操 タイトルに偽りあり

タイトルに偽りあり。悪趣味処刑法100とでもしておくのが適当か。一口話を求めている人にはよいかもしれないが、数を打つことによってそれぞれのエピソードの純度が落ち、中途半端なものとなっている。

危険な文章講座 山崎浩一 文章読本界のアンチヒーローな一冊

文章読本界のアンチヒーローな一冊。この種の本にはびこる既成概念をぶっ壊そうとした挑発的な内容は珍しい立ち位置にある。この点だけでも本屋で立ち読みするか、図書館で借りるくらいの価値はあるのではないか。残念なのは作者のスタイルと刺激になれた中…

ゲームにすればうまくいく―<ゲーミフィケーション>9つのフレームワーク 深田浩嗣 

ゲーミフィケーションをわかりやすく説明した本。 ゲーミフィケーションとは、本書の言葉を借りれば「ゲームの要素をゲーム以外の領域で活用していく」ことだ。Gデザインブロックという聞きなれない言葉を九つのブロックに分け、現実のビジネスの成功例とい…

別役実の犯罪症候群  別役実 学術書のようなつまらなさ

パラパラやって、力のこもった文章にひかれて読書を始めた。クレッチマーの系譜である犯罪心理学の立場から書かれたものかと思いきや、作者の観念的な主張が綴られた実に読むにたえないものだった。全編がこれ、教科書のような、学術書のようなつまらなさと…

愛は勝つ、もんか 姫野カオルコ 直木賞作家による自虐臭漂う恋愛エッセイ

直木賞作家による自虐臭漂う恋愛エッセイ。少女漫画にありそうなキャッチーなタイトルは作中でもけなしまくっているKANのメガヒット曲、「愛は勝つ」からとっているのだろう。作品はもっぱらシモネタと愚痴でしめられているが、個人ブログや掲示板の書き込み…

すごいっ!ミステリーはこんなふうにして書く―傑作ミステリーを作り上げる作家たちの創作術 女性文学会 

とにかく読み込んでみる。 徹底的に分析する。 要約し、図式化し、フローチャートにして、論旨の流れを明確につかむ訓練をする。 具体的に文章を図式化してみると、視覚的にわかってくる。 指示代名詞、人称代名詞を用いる場合は、それが何を代用しているの…

一瞬で信じこませる話術コールドリーディング 石井裕之 一時期から頻繁にきくようになった言葉

一時期から頻繁にきくようになった言葉「コールドリーディング」。占い師、詐欺師、営業の人が意識的、無意識的にもちいているテクニックだそうだ。本書はそのテクニックや手口の一端をかいつまんで紹介している。 万人にわかりやすく説明しているため、もの…

いつか誰かが殺される 赤川次郎 プロフェッショナルだなあ、という読後感

どの作品を読んでもそれなりに面白い作家だが、逆に言えばホームラン級の作品はまったくない。せいぜい二塁打止まりなのだ。大金持ちの余興からはじまった犯罪劇を磐石の筆で読ませてくれる。物語に意外性はなく、登場人物たちは役割どおりに、時にコミカル…

愛がなんだ 角田光代 イライラしながらも楽しく読めた

都合のいい女の片想い。主人公の女性は健気ではなく馬鹿なのだけど、恋愛真っ只のときは誰だって似たようなことを感じたり思ったりするのではないか。 主人公は仕事にも支障をきたし、迷うことなく退職し、健康ランドでバイトをしながらいつ鳴るとも分からぬ…

罪と罰  ドストエフスキー 変態紳士のスヴィドリガイロフの役割も大きい

我ながら褒めてやりたい。かなり昔に新潮の工藤精一郎 訳を超特急で一度読んだきりだというのに、ちゃんと内容を覚えていた。単に話の展開だけではなく、会話の内容、描写の細部までもがページを手繰るたびにグングン甦ってきた。今回は講談社 北垣信行 訳を…

平家伝説 半村良 純朴な青年の童貞喪失譚と失恋にページの大部分がさかれている

トンデモ本といっても差し支えない一冊。タイトル通り平家のある伝説のひとつが作品の核となっているものの、その実、純朴な青年の童貞喪失譚と失恋にページの大部分がさかれている。全体の三分の一を読み終えたとき、いったいいま自分は何を読んでいるのだ…

結局、自分のことしか考えない人たち サンディホチキス この本は結構ヘヴィだ 

この本は結構ヘヴィだ。主に環境などの後天的な素養により未熟な自我のまま成長した自己愛人間(ナルシスト)の人たちの本性を丸々一冊を使ってこれでもか!と、暴き立てている。人によっては二度と立ち直れないくらいショックを与えることも可能な劇薬。く…

ミカ×ミカ!  伊藤たかみ 性に対する葛藤が書かれていないのは残念

前作はキャッチーで小気味よい快作だった。今作を読み進める内にちょっと落胆してしまったのは、小学生だった頃と中学生の現在との違いがほとんどないことだ。現実の六年生と中学二年とではかなり差があるというのに、主人公は小学生のときから変っていない…

笑ってケツカッチン  阿川佐和子 子供や孫に囲まれた生活の空想を披露している回があるが、そこだけは寒気がするほど切ない

有名作家を父親に持つコメンテーター、知的でいつまでも可憐な雰囲気を失わない稀有な女性。これが本を読む前に作者に持っていたイメージ。内容もそこから大きく逸脱しない。自身の思い出や家族の話題を中心に、自虐と暖かな諧謔を散りばめながら綴られる。…

那覇心中 梶山季之 タイトル作は二十三歳と七十歳のおばあさんとのおぞましい恋を描いた怪作

いずれもストレートに心中事件を扱い、狂言回しが関係者を訪ねてミステリーよろしく死因や動機が判明するプロット。 那覇心中は二十三歳と七十歳のおばあさんとのおぞましい恋を描いた怪作。スワッピング心中はショッキングな死体の有様に黒い笑いがもれる。…

なまけ者のさとり方 タデウス・ゴラス あまりないタイプの読み心地

やる気のないタイトルが笑えたので読むことにした。ジャンルはニューエイジ系の自己啓発本にあたり、「人は平等」と「さからわないこと」という言葉がなんども繰り返されている。精霊や宇宙の話をされると首をかしげてしまうのが我ながら日本人らしいけど、…

悪夢狩り 大沢在昌 女性登場人物が次々に主人公へ欲情するのもこの手の作家にはよくある展開か

ハードボイルド作家によるバイオホラー。新種の薬物が日本へ流入し、摂取した人間は感情の変化によりモンスターへと変態する。元傭兵、現自衛隊の技術顧問の主人公は解毒剤という名の唯一の対抗手段をもって化け物たちを殲滅していくという漫画ではよくある…

スチュワーデス物語 深田祐介 新人スチュワーデスの訓練や裏舞台をまっとうに描いた専門性の強いもの

大ヒットしたらしいドラマは世代が違うので未見。タイトルからコテコテの恋愛モノかと思いきや、新人スチュワーデスの訓練や裏舞台をまっとうに描いた専門性の強いものだった。ふんわりしたナレーションのような文章は終始コメディタッチに徹し、味のあるキ…

無印失恋物語 群ようこ 失恋とあっても悲壮感はまるでない

タイトルに失恋とあっても悲壮感はまるでない。それはこの本がエンタメとしての笑いを提供するスタイルで書かれているからだ。共感もあるかもしれない。しかし、作品の根底に流れているのは、やはり笑いだ。だいたいは周囲の人の失恋話を語り手がちょっとシ…

8月のカモメたち 喜多嶋隆 作者の定番である夏と海を舞台にした爽やかな青春小説

作者の定番である夏と海を舞台にした爽やかな青春小説。これまでに読んだどの作品よりも一文が長く感じられたのは植物や太陽といった風景描写が多いからだろうか。主役は両親の代わりに祖父祖母の元で育てられた十代の密漁女子が配置されている。彼女は金銭…

のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか フランク・ローズ プロの仕事と舞台裏が見れたようで大満足で読了

脳汁がタプンタプンと溢れ出るくらい知的好奇心を刺激された。こういう本を書ける人は、頭の良さだけではなく、膨大な時間をかけた取材を行える意志の強さと、新しい技術と物語が本当に好きなotakuだからこそまとめあげられたのだと思う。様々なメディアやエ…

おみそれ社会 星新一 ああ、これこそ暇つぶしで読む本なのだろう

ああ、これこそ暇つぶしで読む本なのだろう。作者はショートショートの名手だとか色々言われていて、何冊か手にとってはみたものの、今までに面白いと思ったものは一冊もない。本気で。この短編集も、はしにも棒にもかからない可もなく不可もなく……というよ…

雨の日のイルカたちは 片山恭一 グレイト! びっくりするほどつまらない作品だった!

グレイト! びっくりするほどつまらない作品だった! 例のメガヒット作の作家は他にどんな本を書いているのだろうと思わなきゃよかった、それくらい読む必要がなかった本だね。視点の人物が次々に変っていく手法は連作の短編集にありがちだけど、あまりの下…

トム・ソーヤーの冒険 マークトウェイン 呑気な雰囲気のアニメからは想像もできないほど痛烈な皮肉が飛び出したりする

悪戯好きなトムは、度々おばあさんや町の人に迷惑をかけたりするが、その反面、気風が良く行動力の塊で、学校の一部の教師以外からは皆に好かれている。ベッキーとの出会いは小説よりもアニメの方が良い出来だった。よりインパクトのあるものになっていたか…

別れ上手 森瑶子 親切やいたわりの心が老いた人には孤独や甘えを与えるなんて、哀しくも美しい戒めではないか

不倫や男女の恋愛について書かれたエッセイ。この作者の特徴として、バブリーな表現と浮ついた描写があるのだけど、時代性を考慮すればそれが作者のリアルなわけで、現代に生きる私としてはいい時代だったんだな、と多少は羨む余裕もできた。ベタベタした不…

最後の一壜  スタンリイエリン 人間の性質に含まれる邪悪の条痕を扱うもので、それはまた人間性をかなり嘆かわしいほど魅力的にしている

「人間の性質に含まれる邪悪の条痕を扱うもので、それはまた人間性をかなり嘆かわしいほど魅力的にしている」作者が自作の短編小説について語った言葉に惹かれて読みだした。おさめられた十五編すべてが気に入ったわけではないが、少なくとも半分以上は楽し…

怪談の科学―幽霊はなぜ現れる  中村希明 日本の幽霊と海外の幽霊の違いをあげているのは興味深かった

幽霊が現れる、見えてしまう状況を真面目に解説してくれている。こじつけや作者の強力な主観から一種のトンデモ本としても読める。後半になればなるほど作者の主義主張の度合いが増していき、ちょっとついていけなくなることも。何でも幻覚と夢に当てはめる…