悪夢狩り 大沢在昌 女性登場人物が次々に主人公へ欲情するのもこの手の作家にはよくある展開か

ハードボイルド作家によるバイオホラー。新種の薬物が日本へ流入し、摂取した人間は感情の変化によりモンスターへと変態する。元傭兵、現自衛隊の技術顧問の主人公は解毒剤という名の唯一の対抗手段をもって化け物たちを殲滅していくという漫画ではよくある…

スチュワーデス物語 深田祐介 新人スチュワーデスの訓練や裏舞台をまっとうに描いた専門性の強いもの

大ヒットしたらしいドラマは世代が違うので未見。タイトルからコテコテの恋愛モノかと思いきや、新人スチュワーデスの訓練や裏舞台をまっとうに描いた専門性の強いものだった。ふんわりしたナレーションのような文章は終始コメディタッチに徹し、味のあるキ…

無印失恋物語 群ようこ 失恋とあっても悲壮感はまるでない

タイトルに失恋とあっても悲壮感はまるでない。それはこの本がエンタメとしての笑いを提供するスタイルで書かれているからだ。共感もあるかもしれない。しかし、作品の根底に流れているのは、やはり笑いだ。だいたいは周囲の人の失恋話を語り手がちょっとシ…

8月のカモメたち 喜多嶋隆 作者の定番である夏と海を舞台にした爽やかな青春小説

作者の定番である夏と海を舞台にした爽やかな青春小説。これまでに読んだどの作品よりも一文が長く感じられたのは植物や太陽といった風景描写が多いからだろうか。主役は両親の代わりに祖父祖母の元で育てられた十代の密漁女子が配置されている。彼女は金銭…

のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか フランク・ローズ プロの仕事と舞台裏が見れたようで大満足で読了

脳汁がタプンタプンと溢れ出るくらい知的好奇心を刺激された。こういう本を書ける人は、頭の良さだけではなく、膨大な時間をかけた取材を行える意志の強さと、新しい技術と物語が本当に好きなotakuだからこそまとめあげられたのだと思う。様々なメディアやエ…

おみそれ社会 星新一 ああ、これこそ暇つぶしで読む本なのだろう

ああ、これこそ暇つぶしで読む本なのだろう。作者はショートショートの名手だとか色々言われていて、何冊か手にとってはみたものの、今までに面白いと思ったものは一冊もない。本気で。この短編集も、はしにも棒にもかからない可もなく不可もなく……というよ…

雨の日のイルカたちは 片山恭一 グレイト! びっくりするほどつまらない作品だった!

グレイト! びっくりするほどつまらない作品だった! 例のメガヒット作の作家は他にどんな本を書いているのだろうと思わなきゃよかった、それくらい読む必要がなかった本だね。視点の人物が次々に変っていく手法は連作の短編集にありがちだけど、あまりの下…

トム・ソーヤーの冒険 マークトウェイン 呑気な雰囲気のアニメからは想像もできないほど痛烈な皮肉が飛び出したりする

悪戯好きなトムは、度々おばあさんや町の人に迷惑をかけたりするが、その反面、気風が良く行動力の塊で、学校の一部の教師以外からは皆に好かれている。ベッキーとの出会いは小説よりもアニメの方が良い出来だった。よりインパクトのあるものになっていたか…

別れ上手 森瑶子 親切やいたわりの心が老いた人には孤独や甘えを与えるなんて、哀しくも美しい戒めではないか

不倫や男女の恋愛について書かれたエッセイ。この作者の特徴として、バブリーな表現と浮ついた描写があるのだけど、時代性を考慮すればそれが作者のリアルなわけで、現代に生きる私としてはいい時代だったんだな、と多少は羨む余裕もできた。ベタベタした不…

最後の一壜  スタンリイエリン 人間の性質に含まれる邪悪の条痕を扱うもので、それはまた人間性をかなり嘆かわしいほど魅力的にしている

「人間の性質に含まれる邪悪の条痕を扱うもので、それはまた人間性をかなり嘆かわしいほど魅力的にしている」作者が自作の短編小説について語った言葉に惹かれて読みだした。おさめられた十五編すべてが気に入ったわけではないが、少なくとも半分以上は楽し…

怪談の科学―幽霊はなぜ現れる  中村希明 日本の幽霊と海外の幽霊の違いをあげているのは興味深かった

幽霊が現れる、見えてしまう状況を真面目に解説してくれている。こじつけや作者の強力な主観から一種のトンデモ本としても読める。後半になればなるほど作者の主義主張の度合いが増していき、ちょっとついていけなくなることも。何でも幻覚と夢に当てはめる…

人間の証明  森村誠一 四つの流れが進行していくストーリーは読み応え抜群

有名すぎてなかなか手を出せずにいた作品。話や展開がハリウッド映画ばりにご都合主義的すぎる部分があるが、四つの流れが進行していくストーリーは読み応え抜群だった。視点を持つ登場人物が多いため、人間の様々な感情がこれでもかと練り込まれているのが…

われらの時代に―ヘミングウェイ短編集 テスタステロン全開のマッチョな主題

短編集と銘打たれていても、一部のキャラクタは何度も出てくるので連作の小説としても十分読める。解説によれば、作品のモチーフはヘミングウェイ自身が体験したものばかりらしい。なるほど、戦争、暴力、釣り、キャンプ、闘牛、競馬、狩りといったテスタス…

男の焚き火事典 太田潤 頭に男の~とつけるだけでなんとなくその気になってしまう

まず、タイトルが良い。頭に男の~とつけるだけでなんとなくその気になってしまうのだから私も単純だ。アウトドアのときは野人の知り合いにまかせっきりで基本的に荷物運び以外は何もやっていない私だったが、この本の読んだことによって焚き火と焚き火を使…

おとなへの出発―十代-心とからだの変化 奈良林 祥,あしべ ゆうほ 創作色が強くて「オッサン!」って思いながら噴き出してしまったよ

物分りのいい兄貴風の軽快な語り口が魅力な作者さんには申し訳ないけど、読んでいてめちゃ笑った。昭和四十九年の本であるから、やっぱモラルや状況が今と違いすぎて完全にギャグの世界なんだ。しかしながら、いつの世でもイチモツのサイズや自慰行為の回数…

4TEEN 石田衣良 作者の傀儡と化した主役を配して、適当にエピソードを羅列しただけ

和洋、時代を問わず、青春小説は好きなジャンルだ。失われた過去への憧憬や、登場人物を同一視して楽しむ以外のほかに、魅力的なキャラクタと出会える機会が他の多いからだ。残念ながら、今作は直木賞を受賞した作品とは思えないほど質が低いものだった。作…

脳を味方につける生き方 苫米地英人 悪夢のような経歴を持つ学者が書いた自己啓発本

一般人からすれば眩暈を通り越して悪夢のような経歴を持つ学者が書いた自己啓発本。ネットでは時々目にする機会があったのだけど、ちゃんとこの人の本を読むのは今回が初めて。 誰にでも読めるよう平易な言葉で綴られ、難しい話や専門用語もなく、文章量も少…

クレージィ・ドクターの回想 なだいなだ どこの病院の入院患者にも自称天皇が数人いる

精神科医兼作家のエッセイ。やや硬めの落ち着きのある文体だが、そこかしこに笑いの種が仕込まれていて、抱腹絶倒とはまではいかないとしても、読書中何度もニヤニヤさせられた。漫画でいうと劇画でコメディをやってるというか、真顔で冗談を言われているよ…

現役東大生だけが知っている!集中力を高める34のルール 集中力や意志力を高めたい人にはおススメできる本

東大生が合格のために実践した集中力を高める方法、息抜き、生活のサイクルを書き出した本。きちんと結果を出した人は十代の頃からこんなことを行っていたのかと、ただただショッポを脱ぐ思いだ。覚悟を持つこと、頭の切り替え、休養の重要さが説かれており…

郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェームズ・M.ケイン これはまるでジム・トンプスンの作品みたいじゃないか! 

これはまるでジム・トンプスンの作品みたいじゃないか! 読みはじめてまず気がついたことだ。とぼけた性格と後先考えない無軌道なライフスタイルの語り手が、現状に不満を持つ悪い美人と知りあい、情を交わしたあとに犯罪へ走るプロットはそのまんまだ。いつ…

壁際の名言 唐沢俊一 要約すると

怠惰は堕落ではない、生物としての本能である。 所詮は創作物のなかの魅力と現実の人物の魅力とは別物なのだ。 訂正は話が終わったあとで。 現実のすべてに面と向かおうとする者はまず、振り回されて終わる。 人は他人に褒めてもらいたい動物なのである。 優…

しょっぱいドライブ 大道珠貴 自尊心が極端に低い女性が主人公の短編が三つ

自尊心が極端に低い女性が主人公の短編が三つ。表題作は、港町を舞台に、打算と怠惰と妬みが腐った魚ばかりに悪臭を放つなか、老人と三十路女が気色の悪い馴れ合いをおっぱじめて何となく同棲をはじめる話。二作目はかなり短く、関取と中二少女との性の冒険…

メイド喫茶元オーナーが書いた 女の子の取扱い説明書 ヒロN  肩透かし

元メイド喫茶経営者による女の子のハウツー本。 作者の経歴から偏った女性観を見せつけてくれるのかと思いきや、逆に最初の章で「女の子をひとくくりにするのがそもそも間違い」と真っ当なカウンターパンチを見舞ってくれる。内容に目新しさや膝を打ちたくな…

名もなき毒 宮部みゆき 長い。長すぎる。

読後、凡作という印象しか残らなかった。文章は読みやすいが、作品のテーマと展開を考えると相当に長い。長すぎる。半分、いや三分の一くらいの量でちょうどいいのではないだろうか。暇つぶしを欲している人以外にはすすめられない作品。

極道の妻たち 家田荘子 オヤジ向け漫画の人情ネタ

これまで旦那の陰に隠れてスポットの当たることのなかった極道の女の本音を描いたセンセーショナルな実録物。 岩下志麻の映画も含め、エポックメーキングな作品ではあるけれども、彼女らの生態が知れ渡った現在となってはオヤジ向け漫画の人情ネタ程度の読み…

南回帰線 ヘンリー・ミラー 普通の本しか読まない人ならば読破を諦めて本を閉じてしまうのではないだろうか

セリーヌの某作みたいな陰鬱な愚痴をひたすら吐きつづけるスタイルは読む人を選ぶに違いない。上巻の中盤以降、バロウズの裸のランチを髣髴させる性的でファンシーな描写が増える頃には、普通の本しか読まない人ならば読破を諦めて本を閉じてしまうのではな…

書く人はここで躓く―作家が明かす小説作法 宮原昭夫 評判にたがわぬ名著

評判にたがわぬ名著。どのページにも発見があって目から鱗がポロポロ落ちていった。文章は読みやすく、各トピックが短く分けられているため少しずつ読みすすめることも可能だ。私は、技術以前にまず心構えと準備が足りていなかったのだと強く気づかされた。…

抱け、そして撃て 勝目梓 濃厚なセックスと陰惨なリンチの説明にページの大半を割いた作品

元殺し屋が狙撃される場面から始まる。畜生一匹と赤の他人の女の子が犠牲になった。過去に四人も殺めた殺し屋が命がけの復讐に走る理由としては軽すぎる。だが、男は変態的な復讐心を燃やし、ラストまで凶行へとひた走るのだ。最後に殺した相手は政界の寝業…

蛇を踏む 川上弘美 今年読んだ本の中で一番つまらなかった作品

今年読んだ本の中で一番つまらなかった作品。ホラーでも幻想文学でもナンセンスでも風刺文学でもないただの教訓のない寓話。これで芥川賞とは。

ぼくは落ち着きがない 長嶋有 まともな人だけしか出てこないのが逆に凄い

図書部員のちょっとした日常を取上げただけの殆ど何も起こらない話。文学作品には珍しく、まともな人だけしか出てこないのが逆に凄い。学生が主役だからといってラノベのようなエンタメを期待している人にはちょっと不向きかもしれない。名作でもないけど、…