赤目四十八瀧心中未遂 車谷長吉 久しぶりに匂いのする小説を読んだ。

久しぶりに匂いのする小説を読んだ。当然、そこに立ち込めているのは悪臭である。
破滅に酔った幽鬼のような主人公は執拗に暗いが、生の律動を感じさせる独特な文体によって男の内面にある面妖な潔癖症が浮かび上がってくる。
登場人物は全員がなにかに急き立てられていて、一様に余裕がない。
読書中、何度も頭に過ぎったのはリルケ著作、マルテの手記だった。あの本の主人公も系統は違うが神経症的な魂の持ち主で、灰色の街と住人たちを死人のような目で眺めていた……